◆米価・コメ問題

2025年1月26日 2025年2月14日

目次

農林水産省 新たな食料・農業・農村基本計画に関する御意見・御要望の募集
2025年2月7日 (2025年2月21日 締め切りです)2月20日に提出しました。

<送付先> 〒100-8950 東京都 千代田区 霞ヶ関 1-2-1  農林水産省 大臣官房政策課 計画班 宛
氏名/法人名(必須)          一般社団法人 日本飼料用米振興協会 理事長 海老澤惠子
本社・本店等の所在地(必須)       東京都中野区弥生町1丁目17番3号 〒164-0013
職業/業種(必須) 以下の項目より、該当するものをお選びください。      (☑をお願いします)
                    ☑その他
(1)御意見・御要望の分野 以下の項目より、該当するものに1つだけお選びください。 (☑をお願いします)
                    ☑国民一人一人の食料安全保障・持続的な食料システム
(2)(1)で選んだ分野について、御意見・御要望をお書き下さい。(200字程度)

飼料用米が畜産の飼料として良質で優れていることは既に実証されています。助成金など生産支援により、普及・定着してきており、需要が向上しています。水田の畑地化を進めるのではなく、日本の気候風土に合った食用米と飼料用米の一層の利用拡大と増産が、わが国の食料安全保障の要であり、食料自給率の向上に資すると考えます。新基本計画に飼料用米増産・生産の支援を明文化することを望みます。(一社)日本飼料用米振興協会

政府備蓄米 21万t販売 初回は15万t
3月初め入札 農水省


農業協同組合新聞
2025年2月14日

 江藤拓農相は2月14日の閣議後会見で政府備蓄米の売り渡し条件を明らかにした。
 売り渡し数量は現時点で21万tとする。

 昨年12月末に全農など大手集荷業者の集荷量が前年比で20.6万t少なっていることをふまえた。
 この量を流通させることで流通状況の改善を図る。
 初回は15万tで、24年産米を10万t、23年産米を5万t販売する。
 23年産米を販売するのは業務用等の需要に応えるため。

 また、販売価格を安く設定できる面もある。
 初回を15万tと設定するのは、これが大手卸などが1か月に販売する流通量であり、政府備蓄米の販売で流通ルートに1ヶ月分を乗せることで流通の停滞の解消を図る。
 売り渡し対象は年間の玄米仕入れ量が5000t以上の集荷業者で、卸売業者等への販売の計画・契約をする業者。

 農水省によると89社(全農を1法人とすると63)となる。
 一般競争入札による売り渡しを行う。

 高値から落札することになるが、過度な競争が起きないよう申込数量に制限を設け、申請者の集荷数量のシェアを上限とする。
 売り渡し予定価格は財政法と予算決算、会計令に基づき設定するとしており、価格水準は明らかにしない。
 農水省は1月17日、18日に対象業者向けの説明会と買受資格に関する審査を開始する。
 3月初めに入札の公告を行い、上旬に入札を実施する予定としており、早ければ3月半ばから政府備蓄米の売り渡しが始まる。

 その後、集荷業者から卸に販売され、量販店や業務向けに届くことになる。
落札者の決定後は、売り渡し数量や価格などを公表する。
 農水省は買い受けた集荷業者に対して、その後の販売状況を調査し、販売数量と金額を隔週で報告するよう求める。

 同省は報告内容を取りまとめホームページで公表する。
 一方、集荷業者からの買い戻しは原則として1年以内とするが、農水省との協議のうえ延長することの可能とした。

 買い戻す米は同等、同量のものとする。
 とくに歩留まりを考慮し同等の等級の米を買い戻す方針。
 買い戻しは農水省と随意契約する。
 江藤農相はもっと早く売り渡しを実施すべきとの批判に対して「甘んじて受けとめる」と述べた。
 一方、政府米備蓄の売り渡しで、相対取引価格の下落への懸念があることについて「とにかく今は正常な状態ではない。

 今の米価は農家のためにならない」、「市場に対して公が影響を与えるのは王道ではない。
 しかし、あまりにも高く、他に手がない。
 覚悟を決めてやった以上、結果にも責任を持つ」と強調した。
 2回目の入札時期については売り渡し後の需給状況を見極めるとしているが農水省は21万tは販売する予定で、必要に応じて販売量をさらに拡大するとしている。
 農水省は小規模集荷業者や生産者など米の在庫調査を行っており、3月中旬にも結果を公表する予定。

 在庫を抱えて値上がりを待つ業者がいると指摘されているが、農水省も「在庫を抱えている業者がいると認識している」と話す。

東京新聞 2025年2月2日(日曜日)【予期せぬ天候リスク】 【後継者難】◆不透明感増すコメの需給

農業協同組合新聞 2025年1月24日政府備蓄米放出へ 買い戻し条件付で全農など集荷団体へ販売 農水省 江藤拓農相は1月24日の記者会見で政府備蓄米を全農など集荷団体に買い戻しを条件に売り渡すことができるよう31日の食糧部会に諮問することを明らかにした。

日本農業新聞 2025年1月26日米産地の千葉県多古町でWCS推進耕・畜双方に助成

日本農業新聞 2025年1月25日実需、流通混乱の抑制に期待 備蓄米運用見直し方針で

価格抑える効果も宇都宮大・小川真如農学部助教

コラム【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】サツマイモを消せば世論が収まると考えたお粗末さ農業協同組合新聞 2025年1月24日

日本農業協同組合新聞 2025年1月15日米農家「倒産・廃業」過去最多「予備軍は10倍」との見方も実効的な支援が急務

日本農業新聞 2025年1月8日[論説]米の流通自由化30年 問われる国の安定供給

日本農業新聞 2025年2月8日
備蓄米、早期放出を表明・農相 14日にも放出量公表

米価高騰、新米出てもコメの小売価格が下がらない!!
日本農業新聞
2025年2月8日
備蓄米、早期放出を表明 農相 14日にも放出量公表


激動する日本の主食・米の今、これからを追いかけます

 江藤拓農相は7日の閣議後の記者会見で、政府備蓄米をできるだけ早く放出する考えを表明した。昨年以降、米の流通量が不足し、価格が上昇していることを踏まえた。実際に放出する量や価格水準など、詳細は14日にも示す。備蓄米は、JA全農など集荷業者を通じて市場に出回る。流通不足を理由に放出されれば、現行の備蓄米制度が始まった2011年度以来初めて。

 農水省は1月末、流通不足時でも備蓄米を放出できる新たな仕組みを創設した。これまでは不作や災害時しか放出できなかった。

 新たな仕組みでは、1年以内に同じ量を買い戻すことを要件に、国が集荷業者や卸に備蓄米を販売する。一時的に流通量を増やし、不足感を解消する。販売方法は「入札」を基本としつつ、同省の裁量で販売先を選べる「随意契約」も可能だ。

 今回は販売先を全農などの集荷業者に絞り、入札形式で販売する。入札日や販売量・価格水準、買い戻し価格、販売する年産など詳細は今後示す。

 同省は原則として、24年産の備蓄米を販売し、25年産で買い戻すとしている。

 江藤農相は「(入札)条件の提示が終わった後は、集荷業者との合意を早く取り付け、現物(備蓄米)を渡す手続きを急ぎたい」と強調。実際に備蓄米が店頭に並ぶ時期の見通しは明言しなかった。

 備蓄米が放出されれば、米価は下がる可能性がある。江藤農相は「国が持つ備蓄米を出すことで、農家の手取りに影響が出れば非常につらい」としつつ、「極端な値上がりは米離れを招く」と理解を求めた。

 昨年以降、米の流通量は不足している。全農など主要な集荷業者に集まる米は昨年12月末時点で前年同期比21万トン減。今後の一層の米価上昇を見据え、在庫を抱え込む動きがあるとみられる。

 今回の備蓄米の早期放出表明後、米のスポット取引や指数先物取引に目立った影響は見られなかった。「放出する規模が明らかにならない限り、判断材料にならない」(米卸)と冷静な受け止めも出ている。

東京新聞 2025年2月2日(日曜日)
【予期せぬ天候リスク】 【後継者難】◆不透明感増すコメの需給

農業協同組合新聞 2025年1月24日
政府備蓄米放出へ 買い戻し条件付で全農など集荷団体へ販売 農水省

江藤拓農相は1月24日の記者会見で政府備蓄米を全農など集荷団体に買い戻しを条件に売り渡すことができるよう31日の食糧部会に諮問することを明らかにした。

政府備蓄米放出へ 買い戻し条件付で全農など集荷団体へ販売 農水省.jpg

 2024年産米の相対取引価格は60kg2万3715円となり、1990年以降、過去最高となった。
 生産量は前年産より18万t多い679万tだが、集荷競争が激化し全農、全集連などの集荷量は前年より17万t減少し、米価の高騰が続いている。
 江藤農相は21日の会見で「生産量は増えているのに市場に出てこない」と指摘し、「決して健全な状態ではない」との考えを示していた。
 この日の会見では内閣法制局との協議で買い戻しを条件とすれば食糧法改正しなくても、備蓄米を販売することができると判断し、全農や全集連に同量・同等での買い戻しを条件に販売することを可能とすることを盛り込んだ「基本指針」を31日の食糧部会に諮問することを明らかにした。
 江藤農相は「せっかく米価が上がって生産コストをまかない将来に明るい兆しが出てきたのに国が在庫を出すのかと(生産者に)反発はあるかも知れない」としつつ、高い米価で米離れが起きる懸念もあるなど、安定供給も農水省の責務だと強調、「私自身迷いがある」と話した。
 食糧部会が諮問どおり答申すれば、政府備蓄米を全農など集荷団体に一定の時期に買い戻すことを条件に販売することができる。
 江藤農相は「備蓄米を出すと決めたわけではない。健全な状態ではないものを正常な状況に戻せるような手立ての準備だけはしっかりやっておかなければならない」と話した。
 政府は24年産米で17万tを買い入れている。活用するとなるとこの17万tが対象となる見込み。
 農水省によると「すぐに発動するかは別途検討することになる」と話している。

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日本農業新聞 2025年1月26日
米産地の千葉県多古町でWCS推進
耕・畜双方に助成

WCSを使う酪農家を訪れ品質を確認する県香取農業事務所の職員(右)(千葉県多古町で)

WCSを使う酪農家を訪れ品質を確認する県香取農業事務所の職員(右)(千葉県多古町で)

 米産地の千葉県多古町は、町ぐるみで発酵粗飼料(WCS)用稲の生産拡大に取り組み、作付面積を10年で9倍の70ヘクタールに拡大した。町は独自予算を確保し、生産する水稲農家と利用する畜産農家双方へ助成。耕畜連携による飼料の地域内自給を後押しする。

 県香取農業事務所も、WCSの品質や給与技術の向上を支援している。

面積9倍、域内自給
 輸入飼料の価格高騰や米価低迷を背景に、町内では2013年からWCS生産に着手。

 当時は水稲農家10戸、畜産農家1戸の計7・5ヘクタールで始まった。
 14年に町、同事務所、水稲農家、畜産農家による会合の場を設置。
 畜産農家への意向調査もして、求める品質や価格などを把握してきた。

 当初はかびが発生するなど品質面の課題が指摘されたため、4者で200筆以上の水田を巡回し、中干し以降の落水や雑草の管理状況を確認。

 出来上がったWCSは県畜産総合研究センターに依頼し、品種ごとに発酵状態や飼料成分を分析。
 結果を共有し、栽培や収穫調製技術を向上させた。
 畜産農家向けには、同センターによる給与技術の勉強会を開いた。
 国や県の助成に加え、町も独自予算で支援。WCSの作付けに対し、10アール当たり6000円、団地化に取り組む水稲農家には同1000円を上乗せする。

 畜産農家には、購入費用の補助として同2000円を支給。24年度は作付面積で86ヘクタール分に当たる770万円の予算を確保した。
 町は「団地化を進め、生産の効率化を図りたい」(産業経済課)と話す。
 支援が奏功し、WCSの作付けは水稲農家47戸で計70ヘクタール、利用する畜産農家も11戸に広がった。

 10アール当たり収量は7ロール(1ロール300キロ)から10ロールになった。
 今後はさらに収量と品質を高めるため、現在は約20ヘクタールで導入しているWCS専用品種「たちあやか」の拡大を進める。

 WCSを使う畜産農家でつくる、多古町ホールクロップ利用組合の柳下雄一組合長は「興味を示す組合員も多く、現状はまだWCSが足りない」と期待する。
 WCS10ヘクタールを含む約15ヘクタールで水稲を栽培する平山文雄さん(74)は「夫婦2人では主食用米15ヘクタールの管理はできない。WCSを増やすことで、何とか今の水田面積を守れている」と、WCSの意義を強調する。(志水隆治)

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日本農業新聞 2025年1月25日
実需、流通混乱の抑制に期待 備蓄米運用見直し方針で

 農水省が24日に政府備蓄米の運用見直しの方針を示したことで、米卸、中食・外食といった実需からは、「流通の混乱を落ち着かせるアナウンス効果がある」と評価する声が上がった。
 流通段階で米の品薄感が強く、同省の見直しを受けて流通量が回復することへ期待がある。
 ただ、米価急落につながりかねない懸念はあり、制度の詳細を注視したいと静観する業者が多い。
 江藤拓農相が同日の閣議後会見で、政府備蓄米をJAなどの集荷業者に販売できるよう運用方針を見直す考えを示していた。
 同日の午後、日本炊飯協会の賀詞交歓会が東京都内で開かれ、同協会の千田法久会長があいさつで同省の備蓄米運用方針の見直しに言及した。
 千田会長は「(見直しは)昨日まで全く想像していなかった」と驚きつつも、同協会などが昨年から同省に備蓄米の運用方針見直しを訴えていた中で、「前進した発言をしていただいた」と評価。
 運用方針の方向性を見極めながら、「品質と価格と需給が安定した米の供給を目指したい」と強調した。

 米の流通量が回復する期待感を示す業者が多い。
 コンビニなどに弁当やおにぎりを供給する業界団体の関係者は「(備蓄米を貸し付けできる)体制をつくるといったアナウンスをするだけでも価値がある」と評価。
 業者が米価の先高観から抱え込んでいた在庫を手放す期待もあるという。
 高止まりしている米価が一服する期待がある一方で、「数年前の米価に急落してほしいと考えている業者はいない」(日本弁当サービス協会)とした声が多い。
 政府備蓄米の販売については量や価格、条件など詳細が不明な状況で、米価下落につながる懸念もある。
 大手米卸は「今月末に詳細が明らかになるまで動けない」としており、今後の動向に注目が集まっている。 
(鈴木雄太)

価格抑える効果も
宇都宮大・小川真如農学部助教

 農水省が今回、備蓄米放出に向けた準備を表明した背景には、米の民間輸入が過去最大となり、国内需給に影響を与えかねないという危惧もあるのだろう。
 輸入米の増加で、国産米離れが起きかねないからだ。
 備蓄米が放出された場合、流通段階の集荷競争を一定程度落ち着かせ、産地と卸間の相対取引価格の上昇を抑える効果はあるだろう。
 小売価格も、下がるというよりは、これ以上の上昇が抑えられるという結果になるのではないか。
 一方、産地では2025年産で主食用米の作付けを増やす動きがある。
 春以降作付け動向が徐々に見えてくれば、価格も落ち着いてくるのではないか。
 31日の食料・農業・農村政策審議会食糧部会で示される需給見通しへの、産地や流通関係者の注目は高い。
 1995年に施行された食糧法で備蓄米制度は法制化された。
 備蓄米の放出で主に想定しているのは、不作や災害といった特殊事情で、現状のような流通段階での品薄への対応ではない。
 米の流通が多様化した現代に合わせた、新たな備蓄米の運用方針を定める契機になる可能性がある。
 (聞き手・玉井理美)

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コラム【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】
サツマイモを消せば世論が収まると考えたお粗末さ

農業協同組合新聞 2025年1月24日

コラム
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】
サツマイモを消せば世論が収まると考えたお粗末さ

農業協同組合新聞
2025年1月24日


 国際情勢は、お金を出せばいつでも食料が輸入できる時代の終わりを告げている。
 かたや、日本の農家の平均年齢は68.7歳。あと10年で日本の農業・農村の多くが崩壊しかねない深刻な事態に直面している。
 しかも農家は生産コスト高による赤字に苦しみ、廃業が加速している。これでは不測の事態に子ども達の命は守れない。
 私達に残された時間は多くない。

 しかし、昨年、25年ぶりに改定された「食料・農業・農村基本法」における政府側の説明は、これ以上の農業支援は必要ないというものだった。
 農業就業人口がこれから減る、つまり、農家が潰れていくから、一部の企業などに任せていくしかないような議論は、そもそもの前提が根本的に間違っている。今の趨勢を放置したらという仮定に基づく推定値であり、農家が元気に生産を継続できる政策を強化して趨勢を変えれば、流れは変わる。
 それこそが政策の役割ではないか。それを放棄した暴論である。
 いや、一つ考えてある目玉は「有事立法」(食料供給困難事態対策法)だという。
 普段は頑張っている農家にこれ以上の支援はしないが、有事になったら命令だけする。
 野菜を育てている農家の皆さんも一斉にカロリーを生むコメやサツマイモなどを植えさせる。
 その増産命令に従って供出計画を出さない農家は処罰する。
 支援はしないが罰金で脅して、そのときだけ作らせればいいと。
 こんなことができるわけもないし、やっていいわけもない。
 今、頑張っている人への支援を強化して自給率を上げればいいだけの話なのに、それをしないでおいて、いざというときだけ罰金で脅して作らせるという「国家総動員法」のようなお粗末な発想がどうして出てくるのか。
 しかも、サツマイモが象徴的に取り上げられて世論の批判を浴びたからと、増産要請品目リストからサツマイモを消しておけばよいだろうと、国はサツマイモを消した。
 サツマイモを消しても「悪法」の本質が変わるわけではないのに、なんと姑息でお粗末な発想だろうか。
 もう一つ、農家のコスト上昇を流通段階でスライドして上乗せしていくのを政府が誘導する「強制的価格転嫁制度」の導入が基本法の目玉とされたが、参考にしたフランスでも簡単ではなく、小売主導の強い日本ではなおさらで、すぐに無理だとわかり、どうお茶濁すかの模索が始まった。
 法律もつくり、相応の予算を付けて、コスト指標を作成し、協議会で価格転嫁に取り組みましょう、と掛け声をかけるだけだ。
 こんな実効性のないことに法律をつくり、予算を付けるのは、ごまかしのためだけの無駄金だ。
 価格転嫁というが、消費者負担にも限界があるから、生産者に必要な支払額と消費者が支払える額とのギャップを直接支払いで埋めるのこそが政策の役割なのに、財政出動を減らして民間の努力に委ねようとする。

 とにかく、ことごとく、食料・農業・農村への予算を何とか出さないようにしようという姿勢が至る所に強く滲み出ている。
 それが財政当局の圧力であることは、最近、見事に確認できた。

 2024年11月29日に公表された財政審建議で、財政当局の農業予算に対する考え方が次のように示された。
1. 農業予算が多すぎる
2. 飼料米補助をやめよ
3. 低米価に耐えられる構造転換
4. 備蓄米を減らせ
5. 食料自給率を重視するな
 そこには、歳出削減しか念頭になく、呆れを通り越した、現状認識、大局的見地の欠如が露呈されている。
 食料自給率向上に予算をかけるのは非効率だ、輸入すればよい、という論理は危機認識力と国民の命を守る視点の欠如も甚だしい。
 財政当局の誰に聞いても、日本のやるべきことは2つしかないと言う。
① 増税
② 歳出削減
 これでは負のスパイラルになるに決まっている。
 今が財政赤字でも、命・子供・食料を守る政策に財政出動して、みんなが幸せになって、その波及効果で好循環が生まれて経済が活性化すれば財政赤字は解消する。
 今、「住むのが非効率な」農業・農村の崩壊を加速させ、人口の拠点都市への集中と一部企業の利益さえ確保すれば「効率的」だとする動きが、改訂基本法だけでなく、全体に強まっている懸念がある。
 能登半島の復旧支援に行かれた方はわかると思うが、1年たっても復旧していない。
 国は金を切ってきている。
 「もう住むのはやめたらいいじゃないか。漁業も農業もやめてどこかに行け」と思わせるような状態だ。
 また、全国各地で、台風で被害を受けた水田に対して復旧予算を要求したが出さないと言われたという声も聞く。
 もっと驚いたのが、「消滅可能性自治体」(人口戦略会議)のレポートだ。
 よく読んでみると「消滅しろ」と書いてあるという。
 そんなところに無理して住むのは金がもったいないから早くどこかへ行けという論調だ。
 目先の効率性だけでみんなの暮らしを追いやり、農村・漁村を住めないような状態にしてしまえば、日本の地域の豊かな暮らしや人の命は守れるわけがない。
 「目先の銭金だけの効率性」にこれ以上目を奪われたら、日本の子どもたちの未来は守れない。

日本農業協同組合新聞 2025年1月15日
米農家「倒産・廃業」過去最多
「予備軍は10倍」との見方も
実効的な支援が急務

 米農家の倒産や廃業が相次いでいることが、帝国データバンクの分析でわかった。金融政策の転換を背景に中小企業全体でも倒産は増えているが米農家を取り巻く経営環境は一段と厳しく、農家経営への実効的支援が求められている。

米農家の倒産・廃業の推移
米農家の倒産・廃業、前年比2割増
帝国データバンクは1月12日、レポート「『米作農家』の倒産・休廃業解散動向(2024年)」を公表した。2024年の1年間、負債1000万円以上の法的整理による倒産を集計したもので、倒産は6件、休廃業・解散(廃業)は36件、計42件が退出した。23年は35件だったので前年比約2割増で、年間の最多件数を更新した。
4分の1が「赤字」、過半が「経営悪化」
米農家の2023年度の業績は、最終損益で「赤字」が25.8%、「減益」が29.4%、合わせて「業績悪化」が55.2%にのぼった。帝国データバンクによると「主に法人成りした農家の経営状況をまとめたもの」である。

米農家の業績悪化

 2024年産の相対取引価格は上がったものの、2023年産米まで60キロ1万円台で推移したなかで、肥料や農業薬剤など生産資材のコスト高で利益が残りにくい経営環境が続いてきた。
 「利益が残らないことから翌年の苗床やトラクターなど機材調達費用が捻出できないといった事業に加え、就農者の高齢化や離農が進むなかで次世代の担い手が見つからないといった深刻な後継者不足問題も、コメ農家の廃業を後押しする主な要因となっている」(同レポート)


「倒産予備軍は10倍いる」との見方も
 法人経営で米作りをする石川県の佛田利弘さん(作付面積31ヘクタール)は「長く続いた米価低迷が経営余力を食いつぶし、近年の肥料高騰も響いた。
 人手不足で雇い負けが生じ、手が回らないので収量も伸びない。高温による不稔やカメムシ被害で、23、24年の作況が公表値より悪かったことがトリガーとなった。
 債務超過に陥り改善の見通しのない倒産予備軍はこの10倍、準予備軍はさらに10倍はいるのではないか」と話す。


「金利がある世界」で進む企業淘汰
 倒産が増えているのは農業分野だけではない。東京商工リサーチによると、2024年の全国の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は11年ぶりに1万件を超えた。
 コロナ禍の資金繰り支援で生じた過剰債務の返済が本格化するなか、原材料価格や人件費の上昇が重なり、コスト増を価格転嫁できない中小企業の経営を圧迫した。
 日本銀行は金利引き上げに転換し、政府もゼロゼロ融資(実質無利子・無担保)による資金繰り支援から経営改善・再生支援に軸足を移すなか、今後も倒産が増え淘汰が進むとの見方が強い。


米作りが続けられるように
 中小企業全体の景況感はプラスだが、農業はもう一段厳しい。帝国データバンクの農林水産業の景況感調査(2024年9月)では改善傾向がみられるものの、「悪い」が「良い」を上回った。
 家族農業だけでなく法人も経営が厳しく、力尽きて倒産・廃業する経営体が増えている事実は、米作りの持続可能性に黄信号が点滅していることを意味する。実効性ある経営支援策が求められている。

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日本農業新聞 2025年1月8日
[論説]米の流通自由化30年 問われる国の安定供給

 国が米の流通を厳格に管理する食糧管理法(食管法)の廃止から30年。流通が自由化されて以来、産地は売れる米作りを進めるが、低価格競争や需要減の流れにあらがえず生産基盤は弱体化する。「令和の米騒動」を経て、米の安定供給に向けた国の姿勢が改めて問われている。
 食管法の時代(1942~95年)は、国への全量売り渡し義務が課され、買い入れ価格も国が決めていた。だが財政負担や、ヤミ米の増加を受けて69年、自主流通米制度を導入。95年の食糧法、2004年の改正食糧法の施行で米流通は民間に委ねられた。
 流通自由化に伴う最大の弊害は米価の低迷だろう。大型スーパーが、個人の米穀店に代わり販売の主役となって以来、価格競争が激化。北日本の大冷害や東日本大震災の混乱を除けば、米価は総じて下落傾向となった。
 一方、米の消費量は、食生活の欧米化や単身世帯の増加で減り続け、産地は売れる米を作ろうとブランド米の開発を進めた。結果、「コシヒカリ」や「あきたこまち」「ひとめぼれ」が台頭、北海道「ゆめぴりか」、山形「つや姫」が追い、各産地で独自品種が誕生した。米の食味向上につながったものの、産地に閉そく感が漂う展開となった。
 食管法は廃止から30年たってもなお、産地からは復活を求める声が根強い。復活は難しいが、国による積極的な関与を求めている表れだ。
 米の流通自由化以降、国は財政負担の軽減へ、価格を市場に委ねる政策を推し進めてきた。だが、大手小売りや外食によるバイイングパワーを前に価格は低迷、農家は再生産できない状況に陥った。頼みの経営安定対策も時代によって変化し、経営を支えきれていない。直近の米価は回復してきたものの、肥料など資材高騰が長期化し、経営を圧迫する。再生産できる所得をどう確保するか、直接支払いの強化を含め、国による具体策が問われている。
 米の供給基盤はもろい。昨年は「令和の米騒動」が起きた。一部では転作による生産調整が米不足を起こしたとする見方があるが、正確ではない。政府が米流通を自由化した結果、供給力が落ち流通網にほころびが生じている。
 生産現場では高齢化や担い手不足が深刻化し、カントリーエレベーターや水利施設は老朽化、更新は待ったなしだ。異常高温で病害虫が多発し、資材価格も高止まりする。安定供給のためのコスト、労力は増大す