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現代農業 2015年2月号

2015年 イネと田んぼを元気の源泉に

目 次

◆米価下落に反撃開始! お米の流通読本2015

◆米粉用米、加工用米、飼料米・飼料イネも地産地消

◆つくるぞ、使うぞ 飼料米・飼料イネ

◆米を我らの生き方の基礎に据える

◆草刈りや共同作業を楽しく進める

 2015年を迎えた。米価が下落し、暗い気持で新年を迎えた農家が多いかも知れない。

 昨年暮れには総選挙が行なわれた。与党の安定多数は変わらず、「アベノミクスは評価された」と、安倍首相は成長戦略とこれにむけた規制改革を一層進めるだろう。選挙の争点にはほとんどならなかったがTPP交渉が加速する危険も高まった。一方では、4月に統一地方選挙をひかえていることもあり、成長戦略の成果が地方にも行き渡るようにしたいなどと「地方創生」をアピールしていくだろう。

 しかし、先月1月号の「主張」でも述べたように、アベノミクスと「地方創生」は、相いれない。

 米価が下がれば農家の財布も地域も冷え込む、これをなんとしてもハネ返したい。米と田んぼを守ること、農家の「地方創生」はここから始まる。そのために今年、取り組みたいことが3つある。

 まずは、米の売り方の工夫。すぐにだれでもできることではないし、それだけで米価下落の打撃を解消することは難しい。しかし、ここで売り方に知恵をしぼることは、明日への希望を見出すことにつながる。

 2つめは飼料米・飼料イネの拡大、定着に本腰を入れること。助成金を活用して田んぼを守りながら所得を確保し、地域型畜産を発展させる。多収にも腕を鳴らしたい。

 そして3つめは、新設された「多面的機能支払」を含む「日本型直接支払」をめいっぱい使うこと。この制度は農家、地域の裁量が大きい。アゼ草刈りや水路、農道の補修、遊休農地の活用、防災・減災力の強化から、農村文化の伝承まで、みんなで大いに工夫したい。

 新年にあたり、農文協が2015年新春発行にむけて準備してきた作品群を素材に、イネと田んぼを守り、村に活気を呼ぶ道を考えてみよう。


米価下落に反撃開始! お米の流通読本2015

 まずは米の売り方。本誌でも米の売り方をめぐる元気な取り組みを紹介しているが、本誌の姉妹雑誌『季刊地域』20号(1月5日発売)では、「米価下落に反撃開始! お米の流通読本2015」という大特集を組んだ。「概算金」はなぜ下がったかなどの「お米の値段の決まり方編」、回転寿司やコンビニなどが米の使用量を秘かに減らしていることを追求、いっぽう、「農家のおにぎり」はデカイことを明らかにした「ご飯モリモリ編」、元気に米を売る事例を集めた「地元力で反撃編」、加工用米、米粉用米、酒米、飼料米・飼料イネなどの「米はご飯用だけじゃない編」、そして「農協が米直売編」の5つの構成。

「地元力で反撃編」の事例の一つ、山口県阿武町の農事組合法人福の里の取材記事は、集落営農のおいしいお米を、縁故米と直売所で72tも売っている話だ。

 福の里は、7集落111.4haの農地を引き受ける農事組合法人。法人が経営する「福の里直売所」はオープンして九年目を迎える。営業日は水・土・日祝のみだが、2013年の売り上げは約2530万円、その半分は米や米の加工品だ。米は自慢のコシヒカリともち米を合わせて約700万円、量にすると700袋(1袋は30kg)。販売価格は、コシの白米5kg2000円、玄米30kgなら9000円とスーパーなどとくらべ決して安いわけでないが、売り上げは年々増加。30kg袋をじゃんじゃん買うようなリピーターのお客さんも、初めてのお客さんも「福の里のおいしいお米」を求めて山の中までわざわざ来てくれる。

 そして、この集落営農には直売所以外に、組合長の市河憲良さんも把握していない米の販売ルートがある。それは組合員が注文する保有米や縁故米だ。組合員は事前に注文しておけば、直売所で買うより安く20袋までは1袋7000円、それ以上は8000円で無制限に購入できる。

 14年産の保有米と縁故米は、全部で1800袋900俵分の予約があった。これは、直売所で売れる量のじつに3倍、それだけでも法人の売り上げは1260万円以上になる計算だ。組合員戸数は100戸ほどなのにである

「子どもらに送るぶんを考えても多いわなぁ。みんなそれぞれ昔からのつきあいで、遣いもんに使ってるんだと思うけど」

 市河さん自身も毎年個人的に約170袋を福の里から購入している。家族用や萩市内の知り合いに売るほか、大阪に嫁いだお姉さんが、大阪の寿司屋や友人たちに注文を取ってまわったりしている。縁故米といってもお金はきっちり頂いており、立派な個人産直。大阪にもすっかり福の里ファンになった人が多くいるらしい。

 さすがに14年産は理事会で値下げの話が出たが、結局やめにした。

「お米を買ってくれる組合員さん一人ひとりにほんのちょっと高いのを我慢してもらえばこちらは大変助かるし、法人もつぶれないですむ。実際、組合員さんからまったく文句は出てません。お米を買って法人や地域を応援してもらっとる、そう考えるようにしています」

 村内の自給を高め、それぞれのつながりを生かして都市にも届ける。保有米、縁故米も生かし、米をめぐって地元でおカネがまわるしくみが生まれているのである。


米粉用米、加工用米、飼料米・飼料イネも地産地消

「米はご飯用だけじゃない編」に登場する福井市の(株)アジチファームでは、2014年、69haのイネをつくった。うち、主食用以外の米が半分以上の約37ha。米粉用米や飼料米・飼料イネ(WCS)、加工用米、備蓄米他、すべて転作扱いになる米だ。

 社長の義元孝司さん。ここまで米価が下がるとは予想していなかったのだが、今となっては非主食用米にリスク分散しておいて本当によかったという。非主食用米は補助金も入るし、売り先と契約してからつくるものなので非常に安定している。だが、義元さんにとっては、補助金はおまけ。非主食用米は経営に必要だからつくっているものだ。

 3年前に、直売所・米粉パン屋・レストランが一体となった地産地消の店として、直営店「アグリスタイルほやほや」がオープンした。まず、ここの一番の目玉商品・米粉パンの原料に、米粉用米が必要だ。そして飼料米と飼料イネ。直売所には、野菜や加工品とともに、肉や卵、牛乳などの畜産製品が並んでおり、ひときわ目を引く。「ここのお米を食べて育った豚の肉です」というようなポップが立っているからだ。

 アジチファームは現在直径40kmの範囲、約180人から農地を借りている。この数は今後もどんどん増えそうだが、義元さんが心配するのは、田んぼを預けて土地持ち非農家になってしまった人たちが、だんだんにこの地に住み続ける理由を見失うかもしれないということだ。農地というくびきを失うと、地域と自分をつなぎとめるものがなくなるからだ。

 彼らがここにいるための理由付けが必要だ。そのために農業者にできること、やるべきことは「食」だと義元さんは思う。

 ここにいればおいしいものが食べられる、目の前の、いうまでもなく安心なものが毎日食べられる――その幸せを提供すること。そしてそれを「仕事」にすること。地主であり、お客さんである人たちと連携して、一つの商圏をつくるのだ。だからアジチファームでは、主食用米はもちろん、米粉用米も飼料米・飼料イネも、そして大豆も野菜も、田んぼからとれるものはすべて地産地消なのである。


つくるぞ、使うぞ 飼料米・飼料イネ

 この飼料米・飼料イネを地域の力で拡大・定着させ、田んぼを守りながら所得を確保するのも今年の重要課題。これにむけ、農文協では2月に『DVD つくるぞ、使うぞ 飼料米・飼料イネ』(全2巻)」、『別冊現代農業 飼料米・飼料イネ』を発行する。増収技術、家畜への利用法、そして稲作農家と畜産農家を結ぶしくみづくりまで、先進的な事例に学びながら、構想と技術を膨らませたい。

 DVDでは、本誌12月号「みんなの知恵で、目指せ飼料米1tどり」で紹介した、山口県の「秋川牧園飼料米生産者の会」の面々が登場、多収への熱気を伝えてくれる。堆肥を生かし、耕作放棄地を復活して飼料米1tどりをめざし、飼料イネでは3tどりをねらう。

 飼料米を鶏に活用する秋川牧園も本気だ。

「戦後まもなく、政府と消費者が農家の方に『たくさん米をとってください』と団結して応援していた頃、農家も、農業もとっても元気だったんですよ」と秋川実会長。そのときの元気を取り戻したいという。

 飼料米も飼料イネも、コストをかけずに多収をねらうには畜産農家と連携した堆肥活用がポイントになる。そして堆肥が田んぼの地力を高める。

 今年2015年は、国連食糧農業機関(FAO)が定めた「国際土壌年」である。山からのミネラルを含む水を生かし湛水する水田は、地力維持からみても大変すぐれた装置である。この水田の地力が近年の乾田化、畑地への転換で消耗してきていることが問題になっている。飼料米、飼料イネの堆肥栽培は水田の地力を高め、「国際土壌年」に相応しい農家の取り組みでもある。

 農文協ではこの春、土と田んぼの価値を広く国民にアピールする国際土壌年記念ブックレット(日本土壌肥料学会編)を発行する。

米を我らの生き方の基礎に据える

 主食用米だけでなく加工米や酒米、さらには家畜のエサとしても米を活用する。先月号の「主張」で紹介した「新みずほの国」構想の地域展開が、ここにきて花咲きそうである。『「新みずほの国」構想?日欧米 緑のトリオをつくる』(農文協刊、1991年)の著者、角田重三郎さん(東北大学名誉教授)は、本誌1991年9月号でこう記している。

「私は日欧米先進三極が、『地球環境の保全』と『世界全体の食糧の安全保障』を共通の戦略・大目標とすることにまず合意し、それを進めるための戦術・具体的な方策の重要な一部としてアメリカの主穀のトウモロコシ、ヨーロッパの主穀の小麦、日本の主穀の稲に十二分に働いてもらえばどうか、と考えるのである」

「米は、基本的には食用であるが、需給に応じて加工用にも飼料用にも、場合によっては燃料用にも回すのである。農家の自主性が回復され風土が素直に生かされるので、米価などを総合調整すれば生産者・消費者・納税者の三方一両得にもなるようである。

 この政策にギヤーを切り替えれば稲作は復興し、アジア独自の安定した美しい近代社会『新みずほの国』をつくれるであろう」

 この「新みずほの国」構想では米を現在の2倍以上の1800万t生産する(作付面積300万ha)ことを目指している。そして、米の余裕分を飼料に回し、畜産廃棄物を肥料や燃料にして畑作園芸に回せば、畜産や園芸など近代生活を支える農業の新分野が水田稲作と結合し、海と森と川と稲作と畜産と園芸がつながる。一方、林業と稲作と漁業はもともと助けあっている。こうして日本の風土とよく溶けあった第一次産業の系が成立する。

「日本が稲作の役割を一段高めて、アジア独自の成熟近代社会『新みずほの国』を創造すれば、それはアジアの発展途上国の将来設計の重要な参考となるであろう。現在の日本は経済発展の手本にはなっても、アジア近代化の手本にはならない」

 この『「新みずほの国」構想』を読んだ作家の井上ひさしさんは、同号で「成熟社会を築くための叡知 どんな自由化論者も論破は無理だ」と絶賛し、こう述べている。

「いつまでたっても、日本は『工事中』、忙しく、バタバタしている。2千年来の主穀である米を我らの生き方の基礎に据えなおして、しっかりした原理原則をたてるべきときである」


草刈りや共同作業を楽しく進める

 そして今年、この大事な田んぼを守るアゼや水路を維持する共同活動を、「多面的機能支払」を活用して進めたい。

 農文協では1月、「多面的機能支払」の重要な仕事である雑草管理にむけたDVD『雑草管理の基本技術と実際』(全4巻)を発行する。第1巻は除草剤からカルチ、チェーン除草、草刈りの工夫などの除草技術、2、3巻は水田、畦畔、畑地の主要雑草について、その生活環と弱点をつく除草ポイント、そして第4巻では、雑草を上手に抑えながら「土・作物・景観もよくする農家の工夫」をたくさん収録する。

 その一つ、「あぜの高刈りで緑のじゅうたん」は、島根県飯南町・堀野俊郎さんの工夫。高刈りを3〜4年続けると、春のオドリコソウ、スミレに始まり、薄紫のカキドオシ、赤白のクローバ、淡い桃色のゲンノショウコ、名も知らぬ花々を含めて、背の低い広葉の草花(低床草花)が晩秋まで咲き続けるようになり、一方、カメムシのエサになる6〜7月のイタリアンライグラス、8〜10月のメヒシバが姿を消し、斑点米の主因のアカスジカスミカメも見かけなくなったという。捕虫網に入るのは主にクモ、ハチ、ハナアブ類で、殺虫・殺菌剤なしでオール一等米を実現。そのうえ、草刈りがラクになった。背の高いイネ科雑草が減るので、年4回の草刈りは北斜面で2回に、南斜面でも3回に減らせるようになった。中山間の棚田で一番つらい作業を省力でき、ずいぶん助かっている。

 こんな農家の工夫に学びながら、草刈りや共同作業を楽しく進めたい。

「田園回帰時代」を希求する若者たち

 こうしてつくる田んぼと村の元気が、世間を騒がせている「地方消滅論」とは逆の「田園回帰時代」をひらく。

 農文協ではこの春、「シリーズ地域の再生・田園回帰編」(全5巻)をスタートさせる。この田園回帰の意味はどこにあるのだろうか。

 昨年スタートした「内山節著作集」の第4回配本『子どもたちの時間』(1月発行)で内山さんはこう述べている。

「…私はふっとフランスの農村や山村で暮らしていた子どもたちの姿や、村の暮らしとともに学校があった、日本のかつての山村の姿に思いを寄せるのです。自然と関係を結び、村の暮らしと関係を結びながら、自然や村と共同で時間世界を創造し、この関係のなかでの自分の役割をこなすことによって、小さな『大人』として存在していた村の子どもたちの姿をです。

 彼らは関係のなかに個人をつくりだし、関係する世界に支えられながら、同時に自分がその関係の一員としてふるまうことによって、誇り高き小さな『大人』として暮らしていました。ここには永遠に循環する世界があり、この世界と関係を結ぶことによって、永遠の循環系のなかで子どもたちは大人になり、歳をとっていきました。そのときそのときの自分の役割をはたしていけば、彼は誇り高き村人でありつづけ、そこに彼の存在がかたちづけられていました。自分だけの力で、人生の時間を経営する必要もなく、彼の人生はつねに他者との関係のなかにあったのです」

 田園回帰に魅力を感じる若者が増えている。都会のなかで「自分だけの力で、人生の時間を経営する」生き方とは違う農山村での暮らし方、人生を希求する若者たちが増えているのである。

 最後にもう一点。本誌のグラビアでおなじみのカメラマン・橋本紘二さんの写真集『雪国春耕 越後松之山 昭和の山村の記録』が近々発行される(1978年発行『春を呼ぶ村』の増補版)。「日本のかつての山村の姿」をなんとしても今に伝えたい、そんな願いを込めた写真集である。本書に記された橋本さんの言葉。

「越後松之山の冬は、4メートルほども積もる日本でも有数の豪雪地だが、雪が降り止む3月中旬頃、村の人たちは残雪の上に灰を撒き、ノコギリやスコップで雪を割り、消雪作業を始める。春の遅い豪雪地では自然の雪どけなんか待っていられない。自らの手で雪を消し、田んぼの土を出して農作業を始める。つまり、田んぼに自然より一足早く『春』を呼び込むのだ。雪国の農民たちは『春を呼ぶ人』なのである」

 2015年長い冬、農文協もまた、読者と一緒に「春を呼ぶ人」でありたいと思った。

(農文協論説委員会)