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農文協の主張 現代農業掲載


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現代農業 2015年3月号

多面的機能支払・飼料米を活かして、

雑草で元気になる

目 次

◆多面的機能支払を活用して、草刈りを「地域の仕事」に

◆草刈りを早く、ラクに、安全に

◆雑草管理の農家の工夫 5つの方法

◆外来雑草の被害は、こうして拡大した

◆雑草問題からみた飼料米・飼料イネの大義

 鳥獣害が大きな問題になっているが、「雑草」もまた、農業、地域にとって、抜き差しならない課題になってきた。とりわけ、2つの課題がある。

 一つは、アゼや土手の草刈り。高齢化や労力不足などでいよいよ難しくなってきた。畦畔の比重が大きい中山間地ほど大変だ。愛知県農業総合試験場の試算によると、山あいの水田では、草刈り作業に要する畦畔の表面積は平坦地の3倍以上、管理作業時間は4.5倍になるという。

 水田は水路とアゼで成り立っている。これまで水路はむらの共同作業で守られ、アゼや、アゼの延長である土手は田んぼの一部として持ち主によって管理され、守られてきた。それが難しくなるなかで草刈りを「地域の仕事」にする動きが広がっている。

 もう一つは、畑を中心に除草剤では防除できない外来雑草が被害を広げていること。帰化アサガオ、アレチウリ、イチビ、ショクヨウガヤツリなどの外来雑草による被害が、飼料畑やダイズ、ムギの畑、転換畑などで拡大している。たとえば帰化アサガオ類によるダイズ作の被害。中央農業総合研究センターの試算では、減収被害額(年間)は全国で12億4000万円、これにかかわる防除コストの増大が3億5000万円に及ぶという。

 こうした強害雑草化する外来雑草の背景にはトウモロコシ、乾草などアメリカからを主とする2600万tに及ぶ大量の飼料輸入がある。日本の米の生産量は840万tだからその3倍だ。この膨大な輸入飼料にまじって雑草もやってくる。雑草問題からみても、飼料米・飼料イネの拡大・定着の価値は大きい。

「雑草」をキーワードに、農業と地域のこれからを考えてみよう。


多面的機能支払を活用して、草刈りを「地域の仕事」に

「ここは中山間地で条件の悪い田んぼが多く、一番ネックになるのが土手草刈り。田んぼの耕作だけなら今のままでも続けられますが、大きな土手の草刈りまでは手が回らなくなってきた。景観が維持できなくなるんです」

 こう話すのは、昨年11月号で紹介した、長野県飯島町・田切農産の代表取締役、紫芝勉さん。

 田切農産は、地域の担い手法人として、農業ができなくなった人の田んぼを60haほど預かり、他に作業受託や水田転作のネギやアスパラなどもある。これらの作業を社員9名ではとうていまかなえない。臨時雇用で地域の人にも来てもらっているが、それでも精一杯という状況。

 さてどうするか、紫芝さんらのプランはこうだ。

 担い手に農地を預けてしまうと、景観を守るという意識もだんだん遠くなってしまう。それが怖い。だから、地域はみんなで守ろうという意識を作るために、住民それぞれができることをやってもらう仕組み作りが必要だ。

 そこで、新しい法人(地区営農組合)を立ち上げ、地域を守るために活動をする「作業グループ」をつくる。まずは草刈り部隊。草刈りくらいならやれるという人が地域にはいるので、お願いできないか。

 そんなことをみんなで話し合っているときに、「多面的機能支払」のひとつである「農地維持支払制度」ができた。草刈りなどの活動に10a当たり3000円の交付金が出る。地区全体の田んぼ180ha分で540万円になるのだが、これを使えば、作業に参加する人にも仕事としてお願いできる。新しい法人が交付金の受け皿となって一部を共同活動費としてプールして、仕事の取りまとめを行なえばスムーズに進むのではないかと考えたのだ。

 それに、草刈り作業は多くの人でやったほうが楽しいし、作業も早くなる。

「私の経験なんですが、草刈りは1人で1時間やって10aしか刈れないときに、5人チームでやると1人15aくらい刈れる。これ、不思議なんですよね。草刈りって、刈る前に土手の大きさとか草の量に飲まれちゃう。でも大人数でいくと、その圧迫感が非常に少ないんですよ。」

 この多面的機能支払制度は「自由度が高い」と聞いているので、いずれは草刈り以外でも人手のいる作業で困ったときにお願いできる組織にしたいと思っている。草刈り作業グループを皮切りに、直売所グループや農産加工グループ、将来的には独居老人に弁当を配達する福祉グループなども作る計画を立てている。

 こんな大胆な多面的機能支払の活用法もある。昨年12月号の主張「『日本型直接支払』をもっと使う」で紹介した新潟県見附市の取り組み。

 従来の「農地・水」では水路の管理などは「共同活動」として推奨されてきた一方で、個人の営農活動に交付金を使うことはまかりならんとされてきた。これに対し、見附市広域協定では、「畦畔の草刈りは営農活動ではない。水田の多面的機能を維持する本筋の共同活動」との位置づけで、田んぼの畦畔は水路や農道と同じように「集落で管理する施設(共有の財)」とした。こうして、個人の田んぼであろうが、担い手に預けた田んぼであろうが、今年からメニューに入った(多面的機能支払の)「農地維持支払」を使って、畦畔の草刈りに日当を出している。また、草刈りの人手が足りない場合に、隣の集落から応援に出た際の日当もOKとした。

 この背景には、見附市が以前から進めてきた「田んぼダム」事業があるそうだ。大雨の際に田んぼを深水にして貯水し、地域を洪水から守るしくみだ。田んぼダムを正常に機能させるには、除草剤で草の根まで枯らした崩れやすいアゼではダメで、きちんと草刈りして、しっかりしたアゼをつくる必要がある。だから、個人の田のアゼ草刈りも「多面的機能維持」のための共同活動として位置づけられる、との解釈だ。(詳しくは『季刊地域』19号77ページ)

 先の紫柴さんは、「草刈りができないと、景観が維持できなくなる」と述べているが、治水機能をもつアゼや土手はむらの景観の重要な要素でもある。少し前まではアゼ豆のように生産の場でもあり、また、畦畔植物の多くは食用や薬用として利用されてきた。七草粥に使うセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、 ホトケノザ、スズナ、スズシロのほとんども畦畔植物である。カエルや昆虫のすみ家でもあり、子どもたちの遊び場でもあった。

 アゼや土手という人の力が加わって整備された「自然」が加わって、中山間の豊かな景観が形成されている。地域住民やあるいは地元出身者まで巻き込んで、草刈りを「地域の仕事」として賑やかに進めることは、むらを守り「多面的機能」を高める大変重要な活動だ。


草刈りを早く、ラクに、安全に

 農文協ではこの1月にDVD『雑草管理の基本技術と実際』(全4巻)を発行した。このDVDでもアゼの管理は重要テーマの一つ。

 第1巻「雑草管理の基本と除草の実際」の第3章「除草・草刈り 農家の工夫」では、「あぜ・法面編」を設け、その中の「早い、ラクちん、安全 草刈り術」では四人の農家の軽快な作業ぶりを紹介。ナイロンコードのヘッドを少し傾けてやると刈った草や小石が自分のほうに飛んでこないという山野井登喜江さん、「剣道の構え」で、一日草刈りを続けてもくたびれないという80歳に近い細原邦明さん。さらに高刈りや直線刈りなど、「なるほど、こんなやり方があったか」と楽しくなるにちがいない。ほかに「斜面の草刈りをラクにする工夫」などもあり、「刈り払い機編」では、作業を快適にするハンドル調整、気持よく刈れるチップソーの目立て、長もちさせるメンテの工夫などを紹介した。

 第2巻「田んぼ・あぜの雑草」では、アゼから侵入する雑草や、カメムシを呼び込むイネ科雑草の生活史と防除法を解説。そして第4巻「土・作物・景観もよくなる農家の工夫」の第3章「あぜ・法面編」では、高刈りで花も楽しめる緑のじゅうたんつくりやカバープランツを紹介した。

 ラクになるやり方を工夫しながら草刈りを快適に行なうことは健康にもいい。少し前に発表された、「田畑の世話」が高齢者の介護や認知症のリスクを抑制しているという報告(『共済総合研究』第69号 JA共済総研・川井真氏)が話題を呼んでいる。身体機能だけでなく、知的能動性(学習意欲や知的好奇心など)も、「田畑の世話」をしている高齢者のほうが良好。川井氏は、「田畑が自然に囲まれた公共スペースになっていることから、田畑の世話が社会と関係を保つことにつながっているのでは」と分析している。

 草刈りは「田畑の世話」の代表的な仕事。「地域の仕事」として楽しく作業できれば健康長寿効果も倍増するだろう。

雑草管理の農家の工夫 5つの方法

 さて、アゼから離れて、本田、本畑の雑草管理をどうするか。このDVDにはたくさんのアイデアや工夫を紹介したが、これを整理すると以下のようになる。

(1)除草剤を上手に使う。種類と使い方から適期判断に欠かせない葉齢の数え方まで。問題になっている除草剤抵抗性への対処法も解説した。

(2)除草剤以外の防除手段を駆使する。田畑輪換や多年性雑草の塊茎(いも)を死滅させる耕し方。田んぼのチェーン除草、畑のカルチ、草剃り・草削りのワザなど。

(3)生やして退治する方法もおもしろい。表層のタネを発芽させて、これを耕耘・代かき、草削り、太陽熱処理、除草剤などで退治し、その下の層の土はできるだけいじらないで雑草の種子を眠らせておくというやり方。水田からハウス、畑作までいろんな工夫がある。 

(4)雑草が生えにくい田畑の土壌条件をつくる。二山耕起・ウネ立て耕起、ボカシ肥や半不耕起、冬期湛水によるトロトロ層づくりなど、除草剤を使わないイネつくりにむけて農家がこの間、編み出してきた工夫を結集した。

(5)マルチの活用。モミガラなどの有機物マルチと、注目のヘアリーベッチやクズ麦によるリビングマルチを紹介。土がよくなり、肥料も減らせる抑草技術だ。

 こうした直接的な方法とともに、作物を健康に育てることがやはり雑草管理の基本だ。作物の生長力で草を抑える。第1巻で紹介した北海道畑作農家・平和男さんのやり方はこうだ。

 ビートの場合、普通、定植後にまず除草剤で雑草の発生を抑えておいてから、4回ほどカルチを入れるが、平さんは初期の除草剤は使わない。除草剤で初期生育が停滞するリスクを避けるためだ。そのかわり定植2週間後、1回目の「早めのカルチ」を行なう。カルチで除草だけでなく、ウネの地温を上げ、保水性・排水性をよくして作物のスタートダッシュをよくする。「この効果はカルチングでしかできない」と平さん。「早めのカルチ」がうまくいくと、ビートはグンと伸びて株間が葉でふさがる。作物の生長力で雑草を抑えるのだ。

 機械に乗ってのカルチがけでは、補助者が後ろについて歩き、カルチがずれていないか、石など障害物がはさまっていないか、などをチェックすることが大事。奥さんが補助者となって作業することもある。運転する平さんにとっては、後ろから見てもらえる安心感があり、奥さんにとっては「あとでホーを使って草取りするくらいなら、このほうがずっとラク!」。

 手取りの必要をなくし、夫婦円満のためにも、平さんはカルチ除草の精度を高める技を磨いてきたのである。


外来雑草の被害は、こうして拡大した

 さて、第2の問題、外来雑草についてである。
 このDVDの第2巻は「田んぼ・あぜの雑草」(18種)、第3巻は「畑の雑草」(16種)。現在、問題になっている主要雑草を網羅したが、このうち「田んぼ・あぜの雑草」の外来雑草はキシュウスズメノヒエ、アメリカセンダングサの2種だが、「畑の雑草」では16種のうち、アレチウリ、イチビ、イヌホオズキ類、エゾノギシギシ、カラスムギ、帰化アサガオ類、ゴウシュウアリタソウ、ショクヨウガヤツリ、ネズミムギ、ヒユ類の10種が外来雑草だ。

 それぞれについて写真と、これまでに類がなかった生活史のイラストを使いながら、発生状況と被害、特徴と見分け方、発芽・生育・開花・結実・越冬など繁殖にむけた雑草の生育サイクル(生活史)、そして弱点をつく防除のポイントを、雑草研究者の協力を得ながら解説している。

 そして第1巻では、わが国の外来雑草研究の第一人者・黒川俊二さん(農研機構中央農業総合研究センター)に「外来雑草問題の特徴と対策」について解説していただいた。

 なぜ、外来雑草がここまで増えてきたか。黒川さんは「乳価下落」から話を始める。乳価下落のもと酪農家は生産性向上(乳量アップ)、そのための濃厚飼料の多給に向かわざるをえず、こうして飼料輸入が増えて飼料に混じってやってくる雑草の種子も増えた。日本にはこれを防ぐ検疫制度もない。一方、乳価下落のもと多頭化が進み、家畜糞の堆肥化が難しくなった。発酵温度を60度まであげれば雑草種子はほとんど死滅するが、そこまでいかない未熟堆肥の利用が雑草の種子を広げる。畑に生えた雑草を退治してもその周辺で育った雑草は開花・結実して大量の種子をつくり、それらが水の流れに乗って拡散する。黒川さんは、阿武隈川流域のアレチウリの分布図を使いながら、流域にそって広がっている様子を解説。川から水田に入った種子は、発芽しないが死滅もせず、その後畑に転換してダイズをつくると一斉に発芽し、大きな被害をもたらす。

 厄介なのは、この外来雑草は除草剤に強いこと。アメリカでは畑に使う除草剤の種類が日本より多いが、これに耐えて残った雑草が飼料にまじってやってくるのだ。

 外来雑草を防ぐには地域的な取り組みが重要だ。何より大事なのは、早期に発見して退治し広げないこと。そのためには外来雑草の特徴を地域の人がよく知っておくことが必要だが、あまり注意が払われていないのが現実。帰化アサガオ類はもちろん、イチビでは黄色の、マルバルコウはオレンジ色のかわいい花をつけ、あとあと苦労する雑草だとみられないことも多い。アレチウリはキュウリに似た姿をしていて、あぜに生えたアレチウリを見て、だれかが地這いキュウリを育てているのだろうと、草刈りのとき、アレチウリだけ刈らず残した、という話もあるという。
 外来雑草の監視も大事な「地域の仕事」だ。


雑草問題からみた飼料米・飼料イネの大義

 外来雑草対策の抜本的な解決策は、輸入飼料を減らすことだ。その意味でも、飼料米・飼料イネで飼料自給率を高める価値は大きい。雑草の巣になりがちな耕作放棄田を飼料米などで複田できれば、地域の雑草害の軽減にもなる。この飼料米を消費サイドから応援しようという流れも大きくなりつつある。

 農文協ではこの2月、DVD『つくるぞ、使うぞ 飼料米・飼料イネ』(全2巻)、『別冊現代農業 飼料米・飼料イネ』を発行する。そして、「飼料米の大義・米増産の国民的価値を鮮やかに描いた不朽の名著」として、この間の「主張」でも紹介した『「新みずほの国」構想 日欧米 緑のトリオをつくる』(1991年)を復刊する。復刊にあたって、消費者サイドから飼料米振興を展開している加藤好一さん(生活クラブ生協連合会会長・日本飼料用米振興協会運営委員)に解題を執筆いただいた。このなかで加藤さんは、生活クラブ生協が飼料米振興を進めるいきさつにふれているが、大きかったのはトウモロコシを初めてとする遺伝子組み換え作物(GMO)問題で、非GMOトウモロコシを求めていきついたのが飼料米だった。「飼料米は究極のNON―GMOだ」と加藤さん。

 ここにも雑草問題がからんでいる。米国産のダイズはほぼ100%、トウモロコシでも約70%をGMOが占めているが、その多くは、除草剤を頭から散布しても枯れない除草剤耐性作物だ。ヘリで除草剤を散布だけで雑草問題が解決、大規模な企業的農業には魅力的なやり方だ。しかしその一方では、除草剤をかけてもなかなか枯れない雑草が出現して除草剤の使用量が増えたり、飛行機を使った大規模な空中散布が地下水を汚染するといった問題が危惧されている。こんな農業は地力の低下、土壌荒廃を招く恐れもある。 

 日本の農家の雑草とのつき合い方は、そんな乱暴なやり方とは根本的に違う。シーズンにむけ、雑草とのつき合い方を今からみんなで話し合いたい。

(農文協論説委員会)